弁護士の選び方が分からないという方へ、特に訴訟案件の依頼にあたって弁護士の立場から見て留意すると良いと思うポイントを簡単にご紹介します。なお、あくまで当事務所の弁護士が考える主観的な意見であることにはご留意ください。
1.依頼を検討する案件の性質によるスクリーニング
医療過誤訴訟や知的財産権訴訟などの法律学以外の学術的知識の理解を要する専門訴訟か否かという点で、第一のスクリーニングをかけます。専門訴訟については実績のある弁護士に依頼すべきです。当事務所では現在のところ単独では専門訴訟を扱っていませんので、専門訴訟と言われる案件以外の一般的事件(個人の方が抱える紛争のほとんどはここに分類されます)の弁護士選びの基準についてお話します。
2.弁護士と話しをしやすいかどうか
裁判になった場合、裁判所にルーティーンケースとして扱われる多くの事件は事実関係の主張立証がうまくできるか否かが勝敗を分けます。最も避けなくてはいけないのは重要な事実関係や証拠を見落として法廷に顕出できないことです。弁護士とのコミュニケーションがうまくいかないと事情の聴き取りが不十分となり、致命的な結果を招くおそれがあります。話しをしやすいかどうかという視点は重要なポイントです。
3.弁護士の話しが分かりやすいかどうか
弁護士は、依頼者の代理人として裁判所を説得するために様々な書類を提出し、裁判官とコミュニケーションを取ります。裁判上のルールや諸々の制約を意識した事実関係の取捨選択、事実の組み合わせ、証拠をもとに依頼者の主張する事実が何故正しいと言えるのかという説明のつながりなどに意を用いて、依頼者の主張するストーリーを合理的に紡いで一貫して裁判所に示さなければなりません。依頼者から見て、そのような能力に一定程度の信頼が置けるかという点は是非ともチェックしておきたいところです。
4.事件の見通しについて説明をしてくれるかどうか
事件の見通しを立てる能力が、弁護士の力量を示すコアの能力であると考えています。事件の見通しが適切な判断をするための起点となるからです。もっとも、訴訟の進行に応じて暫定的に立てた事件の見通しを修正していく柔軟さも大切です。この能力は多数の事件を処理していく中で磨かれていくものです。その意味では、若手の弁護士より経験豊富な弁護士の方が優位であることは否めません。当事務所では、過去の類似するケースに多く当たることでできる限り誤差のない見通しを立てる、あるいは経験豊富な弁護士と共同することで経験値の差を埋めるという方法を取ります。
5.分からないことを分からないと言うかどうか
弁護士が事前に事件処理に必要な「知識」を全て完璧に備えていることはほぼあり得ません。特に法律知識以外の業界慣行などは一般的には知らないことの方が多いと考えて間違いありません。問題は知識が足りていないということを確実に認識して、その穴を埋める方策を取れるかという点にあります。その意味で、知ったかぶりをしないという点は大事です。
6.関係者に敬意を払える人柄か否か
既に係争状態となっているところへ、弁護士が関与していって紛争を大きくすることほど馬鹿馬鹿しいことはありません。また裁判所を利用する紛争解決システムは、場面にもよりますが、裁判官はもちろん多数の関係者との協働によって健全に働くという側面があります。裁判官が発するシグナルを読み取るにも、手続に不備がないようにするにも、敬意をもって相手に接することのできる人柄でなければ困難をきたします。当たり前のことのようですが、様々な弁護士がいますから存外大事なポイントです。