日常的に弁護士と接する機会のない方の中には、ご自分の抱えている問題が弁護士に相談をすることで解決できるのか分からない、弁護士のほかにもたくさんの士業(司法書士、行政書士など)があって何処に相談に行けば良いのか分からないという方がおられると思います。
できることなら費用を掛けずにご自分で問題を解決したいと考えている方もいるかもしれません。
①ご自分の抱えている問題が弁護士の提供するサービスを利用することで解決できるのか、他の士業の先生に相談した方が良いのか?
②ご自分で問題解決を試みることと弁護士に相談・依頼をして問題解決することの差は何なのか?
弁護士に相談をしようか迷っている方は、下記をご参考にして頂ければと思います。
1.弁護士と他士業との違い
弁護士の取り扱う業務の特徴は極めて大雑把に言うと以下のようになります。
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裁判所を利用する手続、訴訟業務を専門領域としています。
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利益闘争が起きた場面で、あなたを代理して交渉や法律的な主張立証を行います。
弁護士はあなたを代理してあなたの代わりに交渉や裁判所の手続きを進めることができるというのがポイントです。
実際には弁護士に相談をすれば良いか、他士業の先生に相談をすれば良いか、やはりご自分では判断がつかないという方もおられるでしょう。
弊所は、ご相談を受けた案件が他士業の先生に相談をした方が良いと思われる案件については、「信頼できる」他士業の先生をご紹介できます。
2.独力での事件処理と弁護士に依頼した場合の違い
弁護士費用を支出するという経済的コストを回避できる点では、ご自分で事件処理を進めた方が有利です。主張したいある事実を直接に認識・経験して記憶に残しているのは依頼者ご本人ですから、ある程度の思考力とそれを表現する文章力がある方であれば、弁護士に証拠を示して事情を説明し、自分の主張や立証を代理してもらうより手っ取り早く、さらには優れた結果をもたらす可能性もあるかもしれません。
弁護士に依頼をした方が有利な点は何処にあるのでしょうか? いくつか弁護士に依頼した方が有利になるであろう点を挙げてみます。
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裁判官や弁護士が共通して体得している「独特の思考様式」が存在します。書面の書き方、法廷での振る舞い方、和解交渉は、この思考様式を知らないとまず十分な対応ができません。「1回的」に生じた紛争に対応しようと一般の方がインターネットで色々と知識を仕入れたとしても、「何度も」「類似の思考を辿った経験」のある弁護士の方が上手く事件を処理できる確率は高いでしょう。
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弁護士は、法律実務に基づく客観的な視点から徹底的に事件を分析します。依頼者の視点から距離を置いて「多角的」に事件を分析することによって、初めて依頼者の主張や証拠がどのように第三者の心に映るかを想像できると知っているからです。独力で事件処理を進める場合、ご自分の心から距離を取ること自体が極めて困難となります。独力で事件処理をしようとすると、却ってあなたが確信している真実のストーリーを訴えることに失敗する確率は高くなります。
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弁護士に依頼をすれば、事件処理にかかるあなたの労力、時間的コストは大幅に省くことができます。書類の作成提出はもちろん、証拠関係の検討、相手方との連絡、裁判所とのやり取りなどを弁護士が代理して行います。特に「時間の価値」を理解して重要視する方であれば、弁護士へ依頼して事件処理を進めることは意味のあることになります。
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弁護士と一般の方では、リサーチ作業の仕方や精度が違います。弁護士は、実務書、専門書、判例の検索、あるいは他の法曹や士業との検討など考え得る準備作業を徹底的に行います。必要な情報を知らないということ自体が、結果に重大な影響を及ぼすおそれがあると知っているからです。
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弁護士に依頼をした場合、弁護士はあなたの精神的な支えとなります。この点にも価値を見出すことができます。1人で慣れない手続きを行うのは強い不安を覚えるはずです。弁護士に依頼した場合には、その不安を取り除くことができます。
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経験上、裁判官あるいは相手方が依頼した弁護士がどのように思考して行動する傾向があるかをよく把握しているのも一般の方よりもこの業界に身を置く弁護士です。
色々と挙げてみましたが、依頼者によって弁護士のサービスの何処にどのような価値を見出すかは異なることと思います。同じ依頼者の方でも時間軸によって何に価値を見出すかは変化するかもしれません。弊所はこの点も重要なことだと考えいています。
弁護士のサービスが本当にご自分にとって「役に立つと思えるか」、弁護士に依頼した場合の金銭負担がご自分が受けようとするサービスの対価として「納得できるか」、良く考えた上で、ご自分で事件処理を進めるか弁護士に依頼なさるかご検討を頂ければと弊所は考えています。
3.弁護士が行う戦略立案や助言の特徴
弁護士は、依頼を受けた事件について依頼者の正当な利益のために最善の努力を尽くす義務を負いますが、結果を請け負うことはできません。しかし、結果を予測することは重要です。弁護士は、この予測に基づいて事件処理を進めていくのですから。
誰でも現在のある事象から将来の結果を予測するという思考(あるいは結果から原因へと遡る思考)を頭の中でしていると思います。事件を処理する時にも誰もが結果を予測するはずです。
では、弁護士のする予測と弁護士以外の方のする予測とは何か違うのでしょうか? もし弁護士がする予測とそれ以外の方がする予測に違いがあり、その違いがご相談者やご依頼者にとって役に立つものであるならば、弁護士に相談や依頼をすることはその分だけ意味のあることと言えます。
弊所は以下のように考えています。
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弁護士は、訴訟や審判結果の見通しを踏まえた交渉戦略、訴訟戦略の立案を行うことができます。戦略立案には、合意ができない場合(判決や審判になる場合)の結果、選択肢としてどのような可能性があるか、事件に対する見通し(予測)の精度が決定的に重要になります。その見通しの精度が多くの事件処理を経験する弁護士と弁護士でない方とでは違います。見通しを最も適切に立てられるのは訴訟業務を専門とする弁護士です。
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同様に契約書の作成業務などにおいても法的リスクを踏まえた適切な助言を行うことができます。
将来の結果を完璧に予測して支配することは誰にもできません。
しかし、弁護士を利用するのに適した場面では、弁護士のする予測に基づく戦略や助言に乗ることが、ご相談者やご依頼者の望む結果を導く「可能性を高める」有効な方法と言えるのではないでしょうか。